NTF機密第一三一七五五番電


防衛庁防衛研究所藏「山本元帥國葬關係綴」から。

着信者;  第一根據地隊、第二十六航空戰隊、第十一航空戰隊 各司令官
       第九五八海軍航空隊司令、「バラレ」守備隊長
受報者;  聨合艦隊司令長官
發信者;  共符

本文、發 南東方面艦隊司令長官、第八艦隊司令長官
聨合艦隊司令長官セツア左記ニ依リRXZ、RXE、RXPヲ實視セラル
(一)○六○○中攻(戰鬪機六機ヲ附ス)ニテRR發 ○八○○RXZ着、
直ニ驅潛艇(豫メ一根ニテ一隻ヲ準備ス)ニテ○八四○RXE着
○九四五右驅潛艇ニテRXE發一○三○RXZ着(交通艇トシテRXEニハ大發
RXZニテハ内火艇準備ノコト)一一○○中攻ニテRXE發一一一○RXP着
一根司令部ニテ昼食(二十六航空戰隊首席參謀出席)
一四○○中攻ニテRXP發一五四○RR着
(二)實施要領、各部隊ニ於テ簡潔ニ現状申告ノ後隊員(一根病舎)ヲ
視閲(見舞)セラル 但シ各部隊ハ当日ノ作業ヲ續行ス
(三)各部隊指揮官、陸戰隊服裝略綬トスル外当日ノ服裝トス
(四)天候不良ノ際ハ一日延期セラル             (終)

「着信者」は戰史叢書39大本營海軍部・聨合艦隊<4>からの引用である。

發信者が「聯名共符」となってゐる理由は 着信者;
第一根拠地隊司令官 (板垣 盛少將 兵科39、板垣征四郎陸軍大將実弟)
第九五八海軍航空隊司令 (飯田麒十郎中佐 兵科47) が いずれも第八艦隊麾下、
第十一航空戰隊司令官 (城島高次少將 兵科40) が 南東方面艦隊直轄、
第二十六航空戰隊司令官 (上阪香苗少將 兵科43) が 第十一航空艦隊麾下であったためと考えられる。

第九五八海軍航空隊は 指宿航空基地の二座零式觀測機ならびに三座零式水上偵察機を基幹に 昭和十七年十二月にラバウルで開隊された 在ラバウルの水上偵察機隊であり、同隊の一部が当時 第十一航空戰隊に分派されてゐたが 飯田司令の所在については確証なく、 なぜ 着信者の一人になったのか 全容解明には尚疑問が残る。

第十一航空戰隊は ショートランド在の 神川丸、国川丸基幹の水偵隊であり、着信の翌々四月十五日解隊となり、同日付けで 第九三八海軍航空隊 (寺井邦三中佐司令 兵科50)に編成替となり、同時に南東方面艦隊直轄から 第八艦隊麾下になってゐる。 城島高次少將が当該電信をショートランドで受信の後 (母艦錬成航空隊である 第五十航空戰隊司令官として赴任の途次)十八日以前にラバウルに帰任していたことは 種々の証言で確認されてゐる。

『高松宮日記』では着信者に「第九五八海軍航空隊司令」が無く「バラレ守備隊長」の代はりに「バラレ」となってゐる。

上記「本文」は『山本元帥國葬關係綴』にある「筆写原文」から忠実に再現したもの。
冒頭に(使用暗號書 波一 軍極秘)とある。

暦日換字表;

Joseph Finnegan大尉が破ったと謂はれる手法を再現して作成したもの。
ミッドウエー海戰前夜 The superciphered recalcitrant Japanese date-time code.として難攻不落を誇った暦日換字表も 一旦破られてしまうとstipesを変えてもsecurityを失ってゐる。  帝國海軍はその事に気付かず 最後まで同じものを使い続ける。
「セツア」の「セ」が四月を表し「ツ」が十八日を指し、両stripesの交点「ア」が確認符字。

(2004/09/24 一部改)

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